【最新動向】インド、パキスタン主要マイクロファイナンスの動向

2014年1月

 

マイクロファイナンスは、グラミン銀行やBRACの活動で知られるバングラデシュのみならず、インドやパキスタンでもユニークな取り組みが行われています。最近の注目される動きや法制度面での環境の変化をご紹介します。

 

1.インドでのMFに関連する動き

(1)インドでの新会社法の成立

インドでは、1956年から会社法が存在しているが、2013年8月8日に新会社法(Companies Act, 2013)が上院で可決され、同月29日大統領の承認を得て成立した。現在、同法は法務省に送付され、諸規則を整備した上で、2014年4月にも発効する見通し。

この法律にはいくつかユニークな点があるが、マイクロファイナンスとの関連では、CSR条項(第135項)が注目される。これは、インドにおける貧困削減への取り組み強化には企業の貢献が不可欠という考えから、インドで活動する企業は、インド籍の企業か外国の子会社等であるのかにかかわらず、3年間の実績の平均で一定額以上の純資産、回転率、純利益を計上した企業は、3名以上の理事(うち1名以上は外部理事)で構成されるCSR委員会を設置し、企業の純利益の2%(注)をCSRに回すことを義務付けられる。仮にこの支出が実行されない場合、CSR委員会は、その理由を公表する必要がある。

 

(注)500クローレ・ルピー以上の総資産、1000クローレ・ルピー以上の回転資金、5クローレ・ルピー以上の純利益を得ている企業が対象。この条項で、年間20億ドルがCSRに活用されるとの試算がある。

なお、1ルピー:1.67円(2013年12月11日現在)、1クローレ=1000万ルピー

 

【参考】インドには、銀行の融資残高の1割は貧困層に向けないといけないとのユニークな法律がある。最近は、次の法律が成立。

2005年 国家農村雇用保障法

2009年 教育権利法

2013年 食糧保障法

2013年 会社法上院可決、大統領承認

 

(2)全般的動き

● インド政府は、農村開発銀行(NABARD)を通じて銀行との連携による自助グループ(SHG)の育成を促してきた。2012年3月時点で、インドには約1000万のSHGが存在し、うち約800万が600以上の銀行から融資を受けている。

 

● インドにおいては、貧困層の割合が着実に低下してきている。インドのMFの資産規模は資産全体の1%程度。SHGは0.5%程度。AP(アンドラプラデシュ)州やSKSの問題も、国全体の貧困削減の動向との関係では影響は極めて限定的ととらえられている。

 

● 2013年末に向けて、インド議会で金利の上限等を設けたMFI規制法案が審議されてきた。この法律は、成立すれば、各州政府の規制をオーバーライドする。現在、1州のみ、独自の政策をとっているが司法の審判に訴えられている。

 

● AP州(人口約9千万人)では、2006年から社会福祉関連の州政府からの給付に電子決済システムを導入しており、2012~13年をみても12億ドル相当が、このシステムを通じて支払われている。AP州はこのような規模で、電子決済システムをインドで導入した最初の州であり、CGAP(Consultative Group to Assist the Poor)も、電子決済システムが他の金融サービスと結び付くことにより、貧困層に対する金融包摂を強化するものとの見方から、2013年AP州の試みに関する調査を開始した。

 

インド政府は、生体認証を活用した国民へのID付与するAadhaarプロジェクトに着手し、個人認証システムと結び付いた電子決済システムの運用を検討している。政府の方針については司法から給付金の提供にIDシステム使用を義務付けるべきではないとの判断も示されており、今後紆余曲折も予想されるものの、貧困層への金融サービスの提供に際しての取引費用の大幅削減につながるのではないかとの期待もある。

 

(3)インド最大手MFIであるBASIXの動向

◆BASIXについて

1996年にビジェイ・マハジャン氏によって創設された社会企業グループ。

17州(Andhra Pradesh, Karnataka, Orissa, Jharkhand, Maharashtra, Madhya Pradesh, Tamilnadu, Rajasthan, Bihar, Chattisgarh, West Bengal, Delhi, Uttarakhand, Sikkim, Meghalaya, Assam and Gujrat)、223郡、 39,251 か村、 350万以上の顧客(9割が農村の貧困層、1割が都市のスラム住民)の生活向上のために活動。

 

スタッフは1万人以上でうち8割は小都市、村落に在住。金融サービスと技術支援を総合的な形で提供している。活動は、金融包摂サービス、農業・ビジネス開発サービス、組織開発サービスに大別される。

 

● 貧困削減の取り組み:マイクロクレジット⇒マイクロファイナンス⇒金融包摂(Financial Inclusion)⇒包括的成長(Inclusive Growth)へと概念が拡大している。BASIXにおいても、融資のみならず、銀行口座開設、貯蓄、年金、送金、保険、小規模取引、市場との連関、技能・生産性向上を含む総合的なサービスを提供している。

 

● AP州のMFI規制問題の影響:BASIXも大きなトラブルに見舞われたが、ローン・オフィサーのリストラ等で危機を乗り切った。

 

● 資金調達:BASIXも、当初は外部の財団等の資金に頼っていた。現在は、自己資金または株式市場から調達

(参考)米国フォード財団、スイス開発協力機構、タタ財団が400万ドルを当初借款の形で支援。

 

● 日本への期待:日本企業には、BOPビジネスへの参入を期待。

 

2.パキスタン出身のMFIの動向(アガハーン・マイクロファイナンス機関)

◆アガハーンMFI

パキスタンに拠点をおくアガハーン開発ネットワーク(Aga Khan Development Network: AKDN)(注1)の1組織に、マイクロファイナンス事業を行うAKAM(Aga Khan Agency for Microfinance)がある。AKAMは、アジア・アフリカで13のMFI(注2)を創設し、運営している。

 

(注1) イスラム教シーア派イスマイール派の指導者であるアガハーン4世が創設。

(注2) 13のMFIは、アフリカ、南アジア、中央アジアと一部中東諸国に存在するが、アラブ諸国では、シリア、エジプトのみに進出しており、基本的に、スンニー派イスラム・アラブ諸国には浸透していない。

 

● AKAMのMF事業:First Microfinance Bank/Institutionという名称で各国に進出。アフガニスタンでは、BRACはじめ大手のMFIが軒並み、同国から撤退または撤退検討の方向である中、融資残高を拡大している。アフガニスタンにおける女性の顧客割合は、22%(2011年)であった。シリアにおいても、治安情勢が悪化する2011年までは、顧客数、融資残高ともに拡大していた。パキスタンにおいては、内政の不安定と自然災害、ルピーの為替価値の下落等により、顧客数、融資残高(ドルベース)ともに減少しているものの、顧客の71%が農村部で、女性顧客割合が40%、一日2ドル以下の所得の顧客が100%である等貧困層のニーズには応えていることが認識される。

 

・日本との関係:JICAはAKAMが創設したパキスタンのマイクロファイナンス銀行The First Microfinance Bank Ltd.-Pakistan(FMFB-P)に出資。

(参考) 要旨(2012年03月21日JICAおよびAKAMプレスリリースより)

 

・FMFB-PがパキスタンでMF事業を拡大するために必要な資金をJICAが海外投融資を通じて支援するもの。

 

・FMFB-PのMF事業には、AKAM、AKRSP(アガハーン地域支援プログラム)、IFC(国際金融公社)が参加。

 

・JICAは2012年3月21日出資契約に調印。240百万ルピー(約2.22億円)を出資。

 

 

【参考】

2013年9月9日笹川平和財団主催セミナーにおけるPD Raiインド国会議員(BASIX北東地区会長)講演の主要点

 

16th Annual Report 2011-2012 BASIX

http://www.basixindia.com/images/BASIX%20AR%202011-12.pdf

 

JICA プレスリリース「海外投融資事業、制度再開後初の出資契約に調印」(2012年03月21日)

http://www.jica.go.jp/press/2011/20120321_02.html

 

AKAM Press Release “First MicroFinance Bank Pakistan and JICA Sign Agreement to Expand Access to Finance in Pakistan”(March 21, 2012)

http://www.akdn.org/Content/1124/

 

First Micro Finance Bank Pakistan 2011 Report

http://www.akdn.org/publications/AKAM_Pakistan_2012.pdf

 

First Micro Finance Bank Afghanistan 2011 Report

http://www.akdn.org/publications/AKAM_Afghanistan_2012.pdf

 

First Micro Finance Institution Syria 2011 Report

http://www.akdn.org/publications/AKAM_Syria_2012.pdf

 

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