【文献紹介】CGAP「BRACのモバイルバンキングbKashの可能性」

2014年3月

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Microfinance and Mobile Banking: Blurring the Lines? (CGAP)

途上国のマイクロファイナンスが抱える悩みは、マイクロファイナンスは労働集約的なビジネスで、運営管理コストが大きく、それをカバーするために金利を高めに設定せざるをえないこと、貧困削減のツールとしては都市部よりも農村部の貧困層に金融サービスを届ける必要があるが、手間とコストがかかるため、十分浸透できないでいることがあげられる。そうした中、こうした課題を克服する画期的な手段として、携帯電話を活用したモバイル・バンキングが注目されている。

 

バングラデシュの最有力MFIであるBRAC系列のbKashサービスが2011年7月に開始されたが、モバイル・バンキングの活用が、BRACの顧客にどの程度受け入れられるのかについて、BRACとCGAPが共同で実施した注目すべき調査結果がCGAPのブログ、文献で紹介された

Can MFIs Leverage Mobile Banking to Serve Customers Better?
Can MFIs Leverage Mobile Banking to Serve Customers Better?

1. プロジェクト概要

BRACのパイロット・プロジェクトとして、2011年11月から8カ月間にわたってbKash (バングラデシュにおける携帯電話を活用した支払システム)の導入試験が実施された。このプロジェクトは、都市部の5つ支部に所属する約3千名の顧客に対して、ローンの返済をbKash モバイル・アカウントを通じて実行してもらい、試験期間終了後、それらの顧客が返済の手段として、どのような方式を選択するのかを調査するものであった。開始時においては、bKash導入後まだ4か月で、代理店も顧客もこの新たな取引方法に不慣れな状況で実施された。顧客は、それまで、BRACの支部で月一回返済することとされていた。

 

bKash Limitedは、BRAC銀行の子会社であり、米国のMoney in Motion LLCとの合弁会社で2011年7月21日に操業を開始した。そして、2013年4月世銀の国際金融公社が資本参加した。

 

bKash の究極の目標は、バングラデシュの人々の広範な金融サービスへのアクセスを可能にすること。低所得層に焦点をあてて、便利で無理なく信頼できる金融サービスを提供することによって、金融包摂を実現していくこと。

バングラデシュの国民の7割以上が、公式の金融サービスへのアクセスが困難な農村部に居住している。しかし、これらの人々は、遠くからの資金提供を受けたり、生活改善のための金融ツールにアクセスするため、金融サービスを必要としている。

 

バングラデシュ人の68%が携帯電話を利用できるにもかかわらず、15%以下しか公式の銀行システムに関与していない。これらの携帯電話は通話だけではなく、その他の有益な役割にも活用できる。

bKashは、このようなモバイル機器に着目し、omnipresent通信 ネットワークは遠隔地への金融サービスを安全な形で実施できるようにしている。bKash システムを利用することによって、預け入れ(キャッシュイン)、引き出し(キャッシュアウ)ト、プリペイド・チャージ、国内送金、支払い、海外送金、自己資金積立額チェックが可能になる。

キャッシュインやキャッシュアウトのサービスは、顧客が代理店に赴き、現金を預け入れるか、現金を引き出して受け取ることになる。この際、入金額、引き出し額は、携帯の端末画面に表示されることになる(bKashホームページのデモ画面参照)

 

2. 調査結果

(1)調査方法:BRACとCGAPの共同調査により、1,875米ドルから8,750米ドルまでのローンを受けている65名の顧客にインタビューを実施。

 

(2)ローンの返済方法選択の割合

①bKashと支部返却方式の両方を活用すると答えたもの 42%

②bKashのみを活用すると答えたもの 21%

③支部のみを活用すると答えたもの 37%

 

(3)選択の理由

①両方利用グループ:このグループの顧客の17%は代理店と問題が生じたと述べ、33%は、たまたま支部が近くにあったので支部も活用するとし、28%は両方の選択肢がある方がよいと答えた。bKash継続の主な理由としては、支部より代理店が近くにあること、自宅や仕事場からも近いことを挙げた。

②bKash利用グループ:このグループの82%は、平均して1.7km、時間にして15分程度支部より代理店が近くにあることをあげた。bKashを(債務返済以外の)他の目的で利用できることがおおきなインセンティブになっているわけではないことが認識された。このグループの82%は他の活用方法を承知しておりながら、65%は、返済以外の目的でbKashを利用することはなかった。

③bKash利用をやめたグループ:このグループの38%は、bKashのテクノロジーを心地よく思わず、支店返却方式に戻った。別の38%は代理店と問題を抱えていた。これらの顧客が使用する代理店の位置は、支部と比較して平均で0.7km、時間にして7分程度短縮できるだけであった。また、支部に到達するまでの交通費も0.12ドルから0.25ドル程度で、支部が存在する地区にも他の理由でしばしば訪れることがあり、代理店の位置の優位性はほとんどないことが判明した。このグループの特徴として、bKashを選択したグループと異なり、62%の顧客が、返済以外に利用できることを認識していなかった。ただし、すべての顧客を見回しても、bKash使用の有無の決定的な違いは、紙の領収書がもらえるかどうかという程度の認識であった。

 

3. 結論

このパイロット・プロジェクトは、モバイル・バンキングの活用が、マイクロファイナンス・ビジネスと顧客に利益をもたらす可能性があることを支持し、また、時間の重要性についても焦点をあてたとしながらも、BRACマイクロファイナンスのシャムラーン・アベッド・ディレクターは、代理店ネットワークが成熟し、モバイル金融サービスへの人々の認識がより高まったところで、本格的な展開を図りたいとしている。

 

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